Outpatient外来診療

肛門外科・肛門内科

医師紹介

  • 佐々木 宏和医師

    • 肛門外科・肛門内科
    • 外科

    三大肛門疾患の痔核(いぼ痔)、裂孔(切れ痔)、痔瘻(あな痔)はもとより、直腸脱、肛門感染症の一つである尖圭コンジローマといった各種直腸肛門疾患の診断治療を行っております。
    治療の主体は切らない保存的治療ですが、ご希望があれば痛みが少なく根治性が高い手術(ジオンによる内痔核硬化療法、PPHによる環状切除・縫合、シートン法など)を肛門専門医として提案致します。
    また、便失禁の治療にも精力的に取り組んでおります。便のところ失禁の程度、原因を調べ、食事および生活習慣の改善や薬物療法による排便のコントロール、骨盤底筋リハビリなどの保存的治療を多職種連携のチーム医療で行ない経過を見ます。効果が乏しいときは、仙骨神経刺激療法(Sacral Neuromodulation:SNM)を考慮します。

肛門外科・肛門内科の診察を行っています

京都新町病院は、肛門疾患の診断・治療を行っておりましたが、平成29年12月から肛門外科、肛門内科を新設させていただきました。肛門疾患を取り扱う科としては、「肛門科」が親しまれていましたが、厚生労働省の通達で平成20年4月からは医療機関の診療科名の標榜方法が見直され肛門科では標榜できなくなりましたので肛門外科、肛門内科で標榜させていただくことになりました。

京都新町病院は、保険診療で肛門専門医 (日本大腸肛門病学会 肛門領域専門医・指導医)が肛門の診察・治療を行う数少ない総合病院の一つで、同学会認定施設でもあります。
肛門疾患の診断・治療で厚い信頼いただいておりました大阪北逓信病院外科・肛門科で研鑽を積んで参りました。総合病院であり肛門疾患以外に患ってられる全身疾患にも対応できる強みがあります。

肛門疾患の多くは排便習慣の改善や薬物療法といった保存的治療が主体ですが、保存的治療で軽快しない場合で御希望があれば手術を考慮します。
当院では様々な手術に精通しており、患者さまの希望もお聞きしながら症例に合わせて最適な術式を選択し、また、組み合わせております。

肛門疾患の治療

来院される方の多くは3大肛門疾患の痔核、裂肛、痔瘻ですが、その他、直腸脱、直腸粘膜脱症候群、肛門ポリープ、肛門皮垂、肛門直腸周囲膿瘍、膿皮症、毛巣洞、肛門掻痒症、尖圭コンジローマ、排便機能障害の便秘や便失禁 (便漏れ)などです。

A. 痔核

肛門と直腸の境を歯状線といい、歯状線より口側を直腸、肛門側を肛門といいます。歯状線より口側の痔核を内痔核、肛門側を外痔核といいます。痔核が大きくなるのは静脈瘤で、脱出するのは痔核を支えている支持組織が弱って過伸展すると考えられています。男女とも3大肛門疾患の中で1番多く、症状は脱出、出血、疼痛などです。

治療
硬化療法 (ジオン注、パオスクレーなど)
ジオン注 (ALTA) 内痔核硬化療法で内痔核が主体の痔核に効果があります。
日帰り治療が可能で、痛みや合併症が殆ど無く、傷痕もありません。
以前は切除術が必要であった症例の多くがジオン注 (ALTA)で対応可能で痛みが殆どありません。
パオスクレー ジオン注 (ALTA)と同様に硬化療法の1つです。
5%フェノール・アーモンド油 (5% Phenol Almond Oil:PAO)を使用しますのでPAO (パオ)とも呼ばれています。ジオン注 (ALTA)同様痛みが殆どありません。
ジオン注 (ALTA)では、透析療法を受けてられる方は禁忌ですが、パオスクレーは可能です。
効果が認められる期間が1年ほどと短いことが欠点ですが、透析療法を受けてられる方でも行うことができる長所があります。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与は禁忌ではありませんが妊婦、産婦等に対する安全性は確立されていません。
切除術

従来から行われていたオーソドックスな治療法です。
入院が必要で、術後の肛門痛がありますが、術式の工夫と鎮痛剤を上手に服用していただくことで
疼痛のコントロールが可能です。
どの様な痔核にも対応できる長所があります。

PPH
(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids:直腸粘膜環状切除吻合術)

脱肛と直腸粘膜脱に対する新しい発想の手術法です。
直腸内で自動吻合器を用いて緩んだ直腸粘膜の全周性切除と縫合を同時に行います。
短時間で手術は終了し入院期間も短く、痛みも殆どなく、切除術のような傷もないので外見もきれいです。

B. 裂肛

便秘による硬い便や下痢便によって肛門が切れる外傷です。切れる場所は多くが背中側 (6時方向)で次に多いのがおなか側 (12時方向)です。裂肛が慢性化すると(慢性裂肛)乳頭が肥大しポリープができたり肛門の縁に皮膚の飛び出し (見張り疣)ができます。肛門が硬く狭くなります(肛門狭窄)。

治療
LSIS (側方皮下内肛門括約筋切開術)

肛門狭窄が軽度な時に内肛門括約筋を浅く一部切開した後、狭窄を指で調節する術式です。
局所麻酔で日帰り手術が可能です。

SSG (皮膚弁移動術)

肛門ポリープと見張り疣を切除し、皮膚と括約筋を一部縦に切開し横に縫い、縫合した傷の外側をメスで浅く弓型に切開すると肛門側に皮膚が移動する術式です。
腰椎麻酔で行い短期の入院が必要です。

C. 痔瘻

便が肛門小窩 (陰窩)に入り込み肛門腺に感染すると、肛門周囲や直腸周囲が化膿し膿が貯まります。これを肛門周囲膿瘍、直腸周囲膿瘍といいます。肛門周囲膿瘍は疼痛が強く、発熱、肛門周囲の発赤・腫脹を認めます。切開すると膿が排出し楽になります。膿瘍が治る段階で便が入り込んだ部(肛門小窩 1次口または原発口)と膿が出た出口 (2次口)との間にトンネル状の管ができることがありこの状態を痔瘻と言います。

治療
Seton法 (シートン法)

1次口と2次口の間の瘻管に特殊なゴムを通し糸でゴムを縛り、ゆっくり瘻管を切離する括約筋に優しい方法です。
当院では大阪北逓信病院時代から行っているminimal-seton法を行っています。
Minimal-seton法は長い複雑な痔瘻でも瘻管を2次口から括約筋近傍まで切除した上で、括約筋内の瘻管と1次口に対しseton法を行うものです。
Minimal-seton法により複雑な痔瘻の瘻管を短い直線的な形態に変換でき、比較的短い時間で、かつ括約筋にやさしく、機能と形態を犠牲にすることなく根治を可能としています。

開放術 (Lay open)

背中側 (5~7時方向)の浅い単純な痔瘻の場合は、瘻管を切開し開放する術式です。
浅い痔瘻であり括約筋の障害が殆どありません。

当院では術前に肛門を締める筋肉の状態を調べる直腸肛門内圧検査を行い内肛門括約筋の機能低下を認める場合は背中側の浅い痔瘻の場合でも括約筋へのダメージが少ないSeton法を選択しています。
他施設で痔瘻手術を受けられ再発などを含め、御心配なことなどがありましたら気軽に御相談下さい。

D. 直腸脱

年齢を重ねるにつれ直腸を支える組織がゆるみ、直腸の下垂・脱出が起こりやすくなりこれを直腸脱といいます。高齢の女性の生活に支障を来す原因の一つで、特に排便で強く息む習慣のある方に時々認められ、便失禁(便漏れ)を伴うことが多い疾患です。

治療法は、経肛門的手術と経腹的手術の2つに大きく分かれます。直腸脱は良性疾患で高齢者に多いことから、身体的侵襲が少ない経肛門的手術が好まれています。

治療
経肛門的手術

代表的なものとしてGant-三輪法、Delorme法、Altemier法などがあり、肛門縫縮のThiersch法を組み合わせて行うことがあります。

経腹的手術

脱出する直腸をお腹の中で引き上げて固定する直腸固定術という術式があり腹腔鏡下に行うので小さい創で目立ちません。

E. 尖圭コンジローマ

肛門周囲、肛門内、外性器周囲などにイボ状の隆起ができる性感染症の一つです。

治療

外科的治療(切除、電気焼却、冷凍など)、軟膏治療(イミキモドクリーム)などがありますが、まずは軟膏治療を御自宅で行っていただいて効果が乏しい時は外科的治療を考慮します。
軟膏治療の正しい使い方とコツを指導させていただきます。多くの症例で人に知られることなく治癒しています。

F. 肛門皮垂

肛門の縁にできる皮膚の飛び出しのことで、便をふき取りにくい、触ると気になり受診されます。
どうしても気になる場合は、薬では治らないので、切除しますが、通常は治療の必要がありません。

G. その他

炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)に伴う痔瘻などの肛門病変にも対応しています。

H. 便漏れ (便失禁)

「無意識または自分の意思に反して肛門から便がもれる症状」と言われています。
便失禁の原因は一様でなく、様々な要因が関与していると考えられます。ひとつの要因に障害があってもほかの要因がそれを代償していれば失禁症状を呈さない場合もあります。肛門括約筋不全、直腸の感覚や容量やコンプライアンス(柔軟性、たわみやすきの指標)の低下によるリザーバー(貯蔵)機能不全、便性状、直腸肛門の支配神経の異常、中枢神経系における便意の認知障害など、様々な要因が関与していると考えられます(便失禁診療ガイドライン 2017年版から抜粋)。
便失禁は羞恥心のため家族にも相談できず精神的、肉体的にも苦痛で日本では500万人以上の方が悩んでいらっしゃいます。医療機関を受診されず、紙オムツなどでしのぎ、費用とゴミ処理が負担になっている方が大多数というのが現実です。

治療

当科では便失禁の程度、原因を調べ、食事及び生活習慣の改善や薬物療法による排便のコントロール、骨盤底筋リハビリなどの保存的治療を医師、看護師、薬剤師、放射線技師、栄養士、理学療法士などの多職種連携のチーム医療を行い経過を見ます。効果が乏しい時は、仙骨神経刺激療法(Sacral Neuromodulation : SNM)を考慮します。

仙骨神経刺激療法 (SNM)

仙骨神経刺激療法は排便に関係する仙骨神経に持続的に電気刺激を与える治療法で、便失禁に対して有用で保険適用です。
仙骨神経刺激療法の作用機序は、仙骨神経を刺激することによって、陰部神経を介した肛門括約筋・肛門挙筋の収縮や、骨盤神経叢を介した大腸肛門の感覚および自律神経への関与のみならず、脊髄を介した中枢神経への作用など多因子的と考えられています(便失禁診療ガイドライン 2017年版から抜粋)。

大きな切開など行わずに仙骨神経刺激用のリード(刺激電極)を仙骨部に挿入します。体外式の小さい神経刺激装置を携帯し、1~2週間試験的に刺激を行い治療効果を判定します(治療効果確認期間)。有効であればリードと神経刺激装置(心臓ペースメーカーのような小さい装置、22g 44×51×7.7mm)を接続して臀部に埋め込むという非常に身体への負担が少ない治療です。埋め込みが終わればお風呂にも入れ、通常の生活ができますし、神経刺激の調整を御自身でコントロールできます。効果が不充分であればリードを抜去し、また元の状態に戻ることができます。
手術適応は、保存的療法が無効で試験刺激を安全に施行することが可能な症例に適応があり、非常に適応範囲が広いという特徴があります。高齢に伴う括約筋機能の低下、産後、肛門手術後 直腸癌術後、脊髄障害の不完全脊髄損傷や先天性脊髄障害の二分脊椎の便失禁などに対しても良好な成績が得られています。

海外では20年程前から行われ成績は良好です。日本で行われた臨床試験で8割以上の方が有効で、平成26年4月から保険適用になり、日本大腸肛門病学会の便失禁治療の推奨度A(推奨度が最も高い)に位置づけられています。また、尿失禁にも効果があります。
仙骨神経刺激療法は、肛門専門医以外にはまだあまり知られていませんが、便失禁で悩んでいらっしゃる多くの方々に福音となる治療法と言えます。京都新町病院は、仙骨神経刺激療法を行っている数少ない病院の一つです。
便失禁は治療ができる病気となりました。

肛門外科・肛門内科ならではの検査

肛門疾患の検査、診断、治療を重視している当外来では、基本的診察の問診、視触診、指診、肛門鏡診を大事にしております。さらに他の多くの施設では行っていないデジタルアノスコープ、吸角、肛門超音波検査、直腸肛門内圧検査、直腸感覚検査、排便造影検査(Defecography)という検査を必要な時に行い、迅速、的確な診断、治療を目指しています。

デジタルアノスコープ

肛門診察の中で肛門鏡診(肛門の中を観察する検査)は重要なものの一つですが、従来の肛門鏡診は病変を医師しか見ることができないという大きな欠点がありました。当科ではデジアタルアノスコープという機器を用いて肛門鏡で見える画像デジタルでパソコン画面やテレビモニターで見ることができます。

デジタルアノスコープの長所
  • モニターを見て自分の目で確認できる
  • 拡大可能で小さな病変も発見できる
  • 治療経過及び効果を確認できる

吸角

当科ならではの診断法として怒責診というものがあります。
ベッド上で息んでいただき痔核、肛門ポリープ、直腸脱、直腸粘膜脱などの脱出性病変の有無、程度を確認する診断法です。便が出そうになるためベッド上で息むことが困難な時は、トイレへ移動していただき排便する姿勢で息んでいただくこともあります。
診断まで時間がかかり、診察時間のロスが短所でした。そこで吸角という特殊な器具を用いて短時間で確実な診断を行っております。吸角は透明な器を肛門に当て陰圧にすることで肛門管内に潜んでいた痔核などの脱出性病変を肛門外に脱出させる器具で、出血部位を確認することにも利用できます。
ベッド上で診察の流れを妨げずに行うことができる長所があります。

肛門超音波検査

細い棒状(指くらい)の超音波発信装置(プローブ)を肛門内に挿入し肛門括約筋不全や痔瘻、肛門周囲膿瘍などの診断を行う検査です。

直腸肛門内圧検査

肛門の閉まり具合を調べる検査です。肛門を締める筋肉は主に2つで、1つ内肛門括約筋といって自分の意思では締められない自律神経が支配する平滑筋からなる不随意筋で、眠っている時に便が漏れないのはこの括約筋によるものです。もう1つは外肛門括約筋といって体性神経が支配する随意的に働く横紋筋で、ガスや便を我慢する時に働く筋肉です。直腸肛門内圧検査は、この2種類の筋肉の肛門の閉まり具合を調べる検査です。検査時間は数分と短時間です。

検査によってわかること
  • 肛門括約筋が便失禁の原因であるか
  • 内肛門括約筋が原因であるか外肛門括約筋であるか、または、両方が原因か
  • 肛門疾患(痔瘻・痔核・裂肛・直腸脱等)の術前後の肛門括約筋機能の評価
  • 直腸癌の肛門温存手術における術前後の肛門括約筋機能の評価
  • 一時的人工肛門閉鎖前の肛門括約筋機能の評価と人工肛門閉鎖のタイミングの決定 など

直腸感覚検査

直腸内にバルーン(風船)を挿入し膨らませていきます。風船が膨らむと便をしたい感覚(便意)が出てきますが、これが過敏なのか鈍感なのか直腸の感覚を調べる検査です。

排便造影検査(Defecography)

造影剤(バリウム)を含んだ疑似便を肛門から直腸に注入し排便時の肛門、直腸、骨盤底筋群の動きを観察し排便障害の原因を調べる検査です。

担当表予約制

午前 佐々木 佐々木 佐々木 ※佐々木
午後
  • 肛門機能障害特殊外来
  • <予約専用受付電話>

    075-241-7152

    (14時~16時30分)※土・日・祝日を除く

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